今回はいちじくの葉がしおれる原因が「疫病」であるときの「見分け方」と「対処方法」をご紹介します。ご家庭でいちじくを栽培していて、急に葉がしおれてしまったことはありませんか?
考えられる原因はいくつかあるのですが、「疫病」が原因であることに気が付かずに適切な対応をしないでいると枯れてしまうこともあります。葉が急にしおれたときに知っていて損はない情報ですのでぜひ最後までご覧ください。
症状
この日は朝5時からハウス内の草刈りをしていました。9時頃には一通りの作業が終わって帰る片付けをし、いつもの日課で最後に樹を一本一本を観て回っていました。すると、なんだか一本だけ違和感がある樹が…。
他の樹とも比べて全体をよーく観察していますと、葉のしおれかたが他の樹より枝の全体的で、おかしいことに気が付きました。
水は乾き気味で管理をしていましたし、夏場の日中は葉がしおれることもしばしばありますので、最初は本当に「違和感」程度の気付きでした。
ただ、夏場といえ、朝9時とハウス内の気温が上がり始めてすぐのタイミングで枝全体の葉がしおれていること、症状が片側の一部の枝だけででていることは変に思い、「何かが起こっているのでは?」と思いました。
今度は葉だけでなく、樹そのものをよく観察してくと、樹の幹の根本が黒く湿っていることに気が付きました。
具体的には、黒く変色している箇所だけ溶けたようにくぼんでいて、湿っており、白いカビのようなものも観察できました。
考えられる病気
イチジクの樹の根元付近でこのような症状がある場合、考えられる病気は下記の3つです。
- 株枯病
- 白紋羽病(モンパ病)
- 疫病(立枯れタイプ)
このとき、筆者は幹にでる「疫病」について知らず、「株枯病」か「白紋羽病」じゃないかとかなり焦りました。どちらもイチジク園を続けていくのが難しくなる可能性があるからです。
結局は「疫病」と判断したのですが、「疫病」も蔓延した場合は数年はイチジクを栽培できなくなるため、しっかり対応をしないといけない病気です。
見分け方
株枯病
株枯病の場合、地ぎわ部の主幹表皮が濃褐色のあざ状になったり、乾燥したひび割れが観察できます。全体症状として葉がしおれます。表皮が溶けることはなく、根が腐敗することもありません。
白紋羽病(モンパ病)
白紋羽病の場合、根の表面、または地ぎわの幹の表皮に扇形の白い菌糸が肉眼で確認できます。全体症状として葉がしおれます。
疫病「立枯れタイプ」
「立枯れタイプ」の全体症状は株枯病と区別がつきません。初期症状として、高温・晴天の昼間に葉の軽いしおれ・黄化が見られます。しおれ症状は夜間や低温時には回復しますが病気が進行すると回復しなくなります。
「立枯れタイプ」の幹は、感染すると表皮が溶けるように軟化・腐敗し、手で容易に木質部を露出できます。さらに腐敗がすすむと、根が灰色~黒色に軟化・腐敗し、細根は完全に溶けてしまいます。
余談ですが、昔、メルカリで買ったイチジクの穂木で挿し木をしていたら同じような症状がでたことがありました。もしかしたら疫病に汚染された穂木だったのかなと今にして思います。水あげ時にすでに酸っぱい匂いをしていました。
しおれ症状を認めてから枯死するまでの期間はおよそ1 か月です(株枯病は2~3カ月)。株枯病とは異なり、「疫病」は初期症状が出たあとに気温が下がったり乾燥条件が続いたりした場合に病気の進展が止まり、回復することがあります。
結論
今回は上記より、「立枯れタイプ」の「疫病」と判断しました。「疫病」に「立枯れタイプ」と「樹上タイプ」の二種類があることについて筆者は知りませんでした(^^;「樹上タイプ」の「疫病」については過去の記事を参考にしてみてください。
「疫病」にかかった「原因」
おそらく、灌水チューブを使って灌水をしたときに、チューブが土で汚れていて、泥ごと水がイチジクの樹の幹にかかってしまったことが原因と推測しています。これまで、筆者はイチジクの樹の周辺部に直径1m程度の溝を作り、1本1本、株元にホースで水を上げていました。
しかし、畝全体に水を上げるため、病気が発覚する三日前に、試しに一つの畝だけ灌水チューブ(エバーフロー)を使って灌水を試みていました。
その畝の樹から初めて「疫病」が出てしまいました。エバーフローからは高さ1m近くまで水が飛びますので、イチジクの樹に水かかった際に感染してしまったのと思われます。
他にも、「根」から病原菌が入ってしまったと考える場合は、普段から灌水が少なく乾燥していたため、根が弱っていたからとも考えられます。
対処の仕方(2つ)
薬を使います。作業の内容は「患部を削り、保護する」「土壌を消毒する」の2つです。
用意するもの
- トップジンMペースト
- トリフミン水和剤
- ナイフ(樹を削るためのもの)
- ゴム手袋
- マスク
- 計り(グラム単位でかるもの)
- ペットボトル(薬剤を混ぜる)
- ジョウロ(薬剤散布用)
- スプーン(薬剤を取り出すためのもの)
- クッキングシート(粉の薬剤の重さを測る際に使用)
なお、「トリフミン水和剤」に「疫病」の登録はありませんが、「疫病」の「立枯れタイプ」については「株枯病」と同様の土壌消毒(灌注)を行うことが効果的であるとされています。
そのため、名目上は「トリフミン水和剤」を用いた「株枯病予防」という形で消毒を行います。
①患部を削り、消毒する
まず始めに、黒くなっている患部の周辺をナイフで削っていきます。
削ってみるとわかるのですが、内部は樹の皮が黒くなっている箇所よりも広く感染していることがわかります。内部で黒ずんでいる層がある箇所は容易に削ることができます。
私の時は表皮から5mmくらいは健康でも、その下の層で黒く変色している(おそらく、水を運ぶ管の層?)箇所がありましたので、変色している箇所が見えなくなるまで削りました。
変色した箇所はすでに枯れている箇所であったり、感染してこれから腐る箇所になりますので、勇気をもって削っていきます。感染箇所を残さないことのほうが重要です。
次に、削り終えたら殺菌と保護を兼ねて、トップジンMペーストを塗っていきます。
症状がでているすべての患部で同様の処理をします。縦に水がかかったためか、縦に症状が観られました。
②土壌の消毒(最低2回実施)
「根」も「疫病」に感染している可能性があるため、「トリフミン水和剤」を用いて土壌消毒を行います。畑の場合、株元周りを中心に、円を描くようにジョウロを使って「トリフミン水和剤」500倍希釈液を1L~10Lまいていきます。使う量は樹の大きさ次第です。
筆者の場合は今年植えた苗樹でそこそこ成長していたため、株元周辺に3Lの消毒をしています。なお、気温が高いときに水をまくと根が煮えてしまう可能性があるため、気温が高すぎないときに行います。
ご参考までに、「トリフミン水和剤」500倍の希釈は、水1Lに対して2グラムです。
30日後に再度土壌消毒を行うと効果的です(2回目)。
なお、500倍のトリフミン水和剤を用いて土壌消毒を行った場合、そのイチジクは30日以内に収穫した物は食べることができません(2022年8月現在、日本曹達株式会社のパッケージ)。
ただし、メーカーによっては前日まで(24時間)となっているため(石原バイオサイエンス)、どちらが正しいのかはわからず、判明次第、訂正します。
周辺の樹も消毒する
「疫病」の「立枯れタイプ」は、土中水分を通じて他のイチジクの樹に感染が広がる病気です。そのため、樹が大きく、根も広く広がっている場合は、周辺のイチジクの樹についても土壌消毒を行います。
発生時期と対策のポイント(予防策)
梅雨時と秋の長雨時は特に発生しやすく、注意が必要です。土壌の水分を適切に保つことや、雨の際の跳ね返りを防ぐこと、時には高畝にすることや暗渠を作ることなどの工夫が必要になります。「疫病」の病原菌(糸状菌)はコケ類に分類されるため、土中が多湿になると繁殖しやすくなります。
最後に
以上、今回は「立枯れタイプ」の「疫病」の見分け方、および対応方法でした。今回の病気は筆者にとって未知な病気でしたので、また1つ、レベルがあがったかなぁ~なんて思うと嬉しくなります♪樹を削っているときは結構深く削れていくので不安になりました(^^;
最後までご覧いただきましてありがとうございました。
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