今回はイチジクの樹形(仕立て)について触れていきたいと思います。樹形(仕立て)は栽培管理(摘心、芽かき等)、収量、食味に影響がでてくるため、非常に重要となりますので、参考になりましたら嬉しいです。家庭菜園でのおすすめ樹形も紹介しています。
(各画像や写真は後日更新予定です)
おすすめは「開心自然形」
家庭菜園であれば筆者は主幹を短めに切って、変形的な「開心自然形」での栽培を推奨します。あくまで個人的にですが、「一文字整枝」は「開心自然形」に比べると食味も落ちやすいと思うため、家庭菜園ではあまり推奨しません。
果樹栽培の勘どころ
筆者は品質の良い果物を収穫するためには「樹勢をコントロール」できることが重要と考えています。「樹勢をコントロール」することで収量をあげるだけでなく、食味もあげることができるという考えで栽培しています。「樹勢のコントロール」は「灌水」や「施肥」、「新梢管理」、「剪定(冬季)」で強弱をつけることができます。
筆者は「灌水」や「施肥」はしっかりと行い、「樹勢のコントロール」は「新梢管理」で行うべきと考えています。食味を良くするためのテクニックや視点につきましては筆者個人の見解が含まれる点や確証がない部分もありますので、大変申し訳ございませんが省略させていただきますがご容赦ください。
「剪定(冬季)」は、乱暴な言い方をすれば「どのような樹形(仕立て)にするか」ということにもつながります。
樹形を選ぶポイント
家庭菜園においては作業性はある程度無視をし、「新梢管理」による「樹形のコントロール」のしやすさと、収量が多く狙える樹形が良いでしょう。
鉢での栽培なら樹はそんなに大きくなりませんし、地植えでも数本程度であれば、作業性はそこまで気にしなくて良いと考えます。多収で品質(味、大きさ、形)が安定しやすい樹形がおすすめです。
樹勢のコントロールが難しい「一文字整枝」
縦長の限られたスペースでの栽培や、大規模にイチジクを栽培する際に、農薬散布や芽かき、収穫等、作業性に大変優れた樹形となります。家庭菜園で勧めるとしましたら、こちらの樹形は個人的には一番ではないかなぁと思うのが正直な感想ですが、細長く限られたスペースでの栽培でしたら適しています(この場合、Y字型樹形と迷うところです)。農業の現場(桝井ドーフィン)で最も多く採用されている樹形です。
この樹形の特徴は、作業面で大変優れている一方で、強剪定が基本となり、結果枝の数が固定されやすいため「新梢管理」による「樹勢のコントロール」が難しく、新梢は「施肥」や「灌水」による影響を受けやすいため収穫物の品質が不安定になりがちです。「新梢管理」による「樹勢のコントロール」を行うためには主枝の長さを調整することで可能になりますが、予め栽培する面積が決まっている場合は困難であると言えます。
一文字整枝が悪い樹形というわけではありませんので補足です。作業性が最も優れているため、大規模生産に向いています。品質を安定させるため、農業における生産現場では長い間の研究と努力の結果、桝井ドーフィンについては地域ごとに環境に最適な主枝の長さと施肥設計(元肥、追肥)、新梢管理といった栽培管理ができあがっています。地植えの場合は品種を選ぶ樹形と言えます。
地植えでは桝井ドーフィンやバナーネなどの樹勢が弱~中程度の品種に向いた樹形です。根域制限となる鉢栽培などではどの品種でも可能ですが、空間利用効率が非効率であるため、家庭菜園においてたくさん収穫したい人にはお勧めしません。
新梢の樹勢は強いですが、樹そのものの樹勢が落ちやすい樹形で、地植えではネコブセンチュウなどの影響が大きく出やすいのではないかと考えています。農業の現場ではネコブセンチュウ対策として超密植(主枝1m程度)で栽培する方法も近年試されています。
「X字形整枝」
一直線の主枝を2列並行に並べた仕立てです。主枝の列と列の間を広くとることで、一文字整枝のメリットである作業性の良さを残しつつ、一文字整枝に比べて結果数が多いため、その分「樹勢のコントロール」が「新梢管理」にて少し行いやすくなります。
一文字整枝を2列ならべたような仕立てであるため、空間利用効率は非効率です。収穫物の品質はやや不安定と言えるでしょう。収量も同じ占有空間では「盃状形」や「開心自然形」に劣ります。ビオレソリエスを栽培する農家さんの間で増え始めている樹形ですが、家庭菜園であえて採用しなくてもよい樹形ではないでしょうか。
樹勢は骨格となる枝(主枝、亜主枝、結果母枝)の長さで調整します。「新梢管理」でのコントロールが難しい点で「一文字整枝」と同じといえます。
おすすめな「開心自然形」
一番おすすめな樹形です。どんな品種にも向いています。3本の主枝を約60度の角度になるように伸ばし、亜主枝、側枝、結果母枝を出します。新梢が多く出るため、「新梢管理」による樹勢のコントロールが最も行いやすい樹形です。そのため、収穫物の品質が安定しやすく、占有する空間内での結果枝も多いため、多収につながります。
ただし、枝が密集するため、大規模に地植えした場合、新梢管理の作業性はかなり悪くなります。また、風通しも悪くなるため間引剪定が必要になります。
鉢植えはもちろん、地植えでも数本程度であればこの樹形が最も良いでしょう。新梢の樹勢は弱く、樹そのものの樹勢は強く育つ印象です。樹勢が弱~中程度であれば、地植えでも比較的コンパクトに栽培することが可能です。
樹形がある程度の形になるまでに、冬季剪定時に残す枝の序列があり、最初は難しく感じるかもしれませんが、そこが面白いところでもあります。
失敗を恐れず、楽しみながらチャレンジしてほしい樹形です。
“より”美味しいものをお届けしたいため、筆者も今のところ「開心自然形」で頑張る予定です。7反ありますが…(^^;
盃状形整枝
主枝4本を十字に伸ばし、亜主枝、側枝、結果母枝を出しますが、横の主枝から伸びる枝とぶつかりやすく、冬季剪定時は「ぶつからない」ことを意識して行うため、剪定時の残す枝や長さはあいまいで良いのがメリットかなと思います。勘違いされやすいのですが、結果枝は「開心自然形」に比べて少なくなりやすく、「新梢管理」による「樹勢のコントロール」はやや難しいです。そのため、地植えの場合は樹勢が弱~中程度の品種に向いた樹形です。
地植えの場合、作業性も悪くなるため、数本程度までが良いでしょう。結果枝数が「開心自然形」に比べ少なくなるため、占有空間に対する効率性はX字よりは良い程度です。収穫物の品質も同様かと思われます。
品種によってはX字形より「H型整枝」
X字形整枝にそっくりですが、主枝を2本伸ばし、亜主枝を2列並行に並べる点で異なります。X字に比べ、亜主枝を挟むことで、多少は樹勢が落ち着きやすいのではないかと推察します。
結局、おすすめの順は?
「いちじくびより」ですすめる家庭菜園向け樹形の順番は下記のとおりです。
1位:開心自然形
2位:X字形、H型、盃状形(同率) ※
※ 長方形に栽培したいなら「X字形」や「H型」、正方形や円形に育てたいなら「盃状形」
3位:一文字整枝
ですが、ご自身がやりたいと思う樹形で育てるのが1番です!(ここ大事)
イチジクの栽培は楽しんで行うのが1番です!
最近流行りの「一文字」は家庭菜園では樹形の特徴からややミスマッチのように思いますが、細く作ることができるため、限られたスペースで縦長の鉢や地植えするのに向いています。
あとは少し面白みに欠けるようにも…。「一文字」や「X字」、「H型」は農家さんが工場のようにシステム化して生産するための樹形ですから、機械的に強剪定をするこれらの仕立てはどなたがやってもきっちりと管理をすればある程度似たような樹になります。
「盃状形」や「開心自然形」はある程度骨格が出来上がっても、剪定対象の枝は全部と言ってもいいです(*’▽’)樹の性格を観ながら、毎年どんな樹冠にしようかあれこれ想像して、強剪定や弱剪定、間引き剪定を交えて栽培するのも楽しさのひとつのように筆者は思います。
毎年みせる樹の変化も感じることができると思いますよ(*’▽’)
今回は以上です。
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