今回はいちじくの挿し木の方法についてお伝えします。この記事を読むことで、誰でも簡単にいちじくの挿し木について失敗しない方法を知ることができます。初めていちじくの挿し木に挑戦するかた、挿し木はやってみたけど失敗してしまったかた、失敗しないように筆者の経験に基づきとことん丁寧に解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
よくある失敗例(発芽・発根しない例)
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発芽しない、よくある要因
直射日光のあたる場所に保管していませんか?日の光は「光合成」には必要ですが、葉がない挿し穂には不要です。直接、日があたることで穂木の乾燥が進み、枯れやすくなってしまいます。
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発根しない、よくある要因
水を毎日あげすぎていませんか?土が過剰に水分を含んでいる場合、発根が遅れることがあります。根を伸ばすためには展葉後、「適度な乾燥」も必要です。根のない挿し木は切り花と同じ状態であるため、根が十分に伸びないと気温の上がった夏場に枯れてしまう可能性があります。
成功率をあげるために抑えるべきポイント(4つ)
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挿し木の時期(2月下旬~4月末)
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穂木のサイズ(カットの位置、長さ15cm、太さ1.5cm程度)
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保管(日の当たらない明るい場所)
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潅水(
2~3日7日に1回を目安に、乾いたら「朝」実施)(もしくは、毎朝少量 ※追記)
⇒ここでいう少量とは、翌朝には土が乾燥している程度の水量 ※追記
挿し木の時期
寒さに弱いため、地域にもよりますが、2月下旬~4月上旬の期間に行うことをおすすめします。
穂木のサイズ
写真は剪定枝です。これを長さ15㎝くらいに整えていきます。太さは直径1~2cmの箇所を使用します。
【穂木の調整手順】
使用する芽を決めたら、①まず、その芽の上3cm以上を残して水平にカットします。②次に、全体の穂木の長さが15cm程度になる長さで、やや斜めにカットします。その際、使用する芽の下の節を1~2節含めるようにカットします。③最後に、使用しない芽を、カッターなどで削ります。
下の写真は一度挿したものを堀り起こして撮影している関係で芽が出てしまっていますが、ご了承ください(*_*;
穂木を作ったら、水を張ったバケツなどに入れ、半日程度水揚げを行います。
①使用する芽の上、3cm以上を残す理由
切り口から乾燥し、枯れ込みが発生するためです。芽と切り口の間隔が狭いと、せっかく発芽し成長した新梢もあとから枯れてしまうことがあるため、長めに残す必要があります。長く残した部分は翌年6月頃、「ほぞ落とし」といって切り落とします。
②使用する芽の下、1~2節を含めてカットする理由
節の周辺部から発根するため、節を1つ以上含めて穂木をカットします。
③使用しない芽を削る理由
使用しない芽を削ることで、発芽させたい芽や発根に栄養を使うことができます。
なお、吸水時に吸水率を上げるために下部の木の皮を削ったり、また、「メネデール」や「ルートン※」といった薬品を使用する必要はないかと思います。筆者はこの方法で問題なく発芽・発根に成功しています。枯れてしまったときの原因は、穂木に元々病気があった、穂木が乾燥していたなどの場合を除き、挿し木を行ったあとの栽培管理に原因があるかと思います。
※「ルートン」は成長ホルモン剤であり、いちじくなどの果樹(食物作物)には使用できません。遺伝子組み換え作物と同じように取り扱いに法律上の制限がありますのでご注意ください。
挿し木の手順
土は水はけの良い、粒の細かい土を使います。ホームセンターで土を購入する場合は鹿沼土(細粒)がおすすめです。鹿沼土(不揃い)でも問題ありませんし、その場合は安い培養土と1:1でブレンドしても良いかと思います。基本的には養分を含まない土を使用します。細かい土であればあるほど、細かい根をびっしり育てることができます。
容器に土を入れたら、先ほどの穂木を挿すだけです。このとき、上下逆さまに挿さないよう気を付けてください。芽の位置が節より上にくるように挿します。乾燥した土に挿すことで容易に挿すことができます。吸水後に、丁寧に穴をあけてから挿す人もいますが、成功率に差はないように思います。
底から水がでるまでたっぷりと水やりを行います。ホームセンターで買ってきた土は乾いており、水分をを吸収しづらいため、2、3回ほど水やりを繰り返します。
最後に、切り口からの乾燥を防ぐため、木工ボンドを切り口全体に塗ります。切り口表面が乾いてから塗るのがポイントです。
保管の仕方
直接、日の当たらない明るい場所で保管します。地温が上がることで発芽しますが、高い温度で保温し続けると発根よりも発芽が先行しすぎてしまい、後で枯れてしまうことがあります。筆者は日光が直接当たらない軒下や窓のある廊下(室内)で保管していました。夜間や気温が低い日は、家の中にいれるか不織布で覆うなどして温度管理に注意しましょう。なお、筆者が試した結果、完日陰に保管するより、日の光により明るくなる場所に保管するほうが発芽が早いことが判りました。おそらく、規則正しい光の周期が、植物の成長ホルモンを促したものと予想します。また、展葉後まもない時期に直接日の光を充てると枯れたり、葉が弱ることがあります。根が十分に育つまでは直射日光に当てないほうが無難です。
潅水(水やり)について
水やりは植物が最も活動する朝に行います。午前9時頃までに行うのが理想的です。挿した直後は3日間、毎日水やりを行います。前述のとおり、ホームセンターで購入した土は初めのうちは土があまり水を吸ってくれず、乾きやすいためです。その後は土の表面が乾いてきたら水やりを行います。目安としては2~3日に1回のペースで行います。乾燥しないように適度に水をあげる必要がありますが、水を上げすぎてしまうと発根しづらくなってしまいます。
葉が展葉し、一見すると順調に育っているようにみえる挿し木も、実は根が全く出ていなく、切り花のような状態であることもあります。地中の水分が少なることで水を求めて根を伸ばしていきますので、乾燥しすぎないように注意しつつ、適度に水をあげてください。
その他、あれこれ
- 植え替えの時期
「根鉢」ができるくらい根が十分に発達したら植え替えを行います。あくまで目安ですが、10㎝ポッドで挿した場合は5月末ごろ、12㎝ポッドで挿した場合は6月中旬ごろに植え替えます。始めから大きなポッドで挿している場合や畑で十分なスペースを確保して挿している場合は、植え替え不要です。細い鉢であるほど、早く植え替えることができます。
- 複数の芽がでた場合
複数の新芽が発生した場合、生育の悪い方を切除し、1本だけ残します。これは穂木に蓄えられた栄養を効率よく使用するためです。
- 細い穂木や短い穂木はダメなのか?
長さは短くても、また、太さも細くても発芽・発根はしますが、成功率は下がり、また、樹勢が弱くなる印象があります。小さな鉢植えからじっくり何年もかけて成長させる目的以外であれば、十分な長さと太さを確保した穂木で挿し木を行うことをおすすめします。また、穂先に近い部分は発芽が先行しすぎてしまい、発根が遅れて枯れてしまう可能性があります。ネット販売などでカット済みの穂木を購入する場合、これらのことを認識のうえ、購入を検討すると良いかと思います。
- 養分を含まない土を使用する理由
挿し木をする際、養分を含まない土を使用します。おそらくですが、養分は「塩基」に該当するため、肥料を与えると穂木の中の塩分濃度よりも土中の塩分濃度が高くなり、浸透圧の関係で穂木の中から水分が抜けてしまい水を与えても水を吸うことができず、乾燥してしまうからだと思われます。いわゆる「肥料やけ」の状態になってしまうからだと思います。健康に育った木であれば、穂木に蓄えられた栄養で十分に発芽・発根しますので安心してください。基本的に、植え替えをするまで肥料は不要ですが、葉が黄緑になり、元気がなくなってきたらチッソ不足の証拠ですので、速効性のある化成肥料を少量与えてもいいと思います。
なお、筆者がオリジナル培養土(バーク堆肥4、赤玉土3、腐葉土2、牛糞1)で実験的に挿し木をしたところ、挿し木後2日で発芽しました。時期は4月で気温が上がっていたこともありますが、同時に鹿沼土のみで挿し木をした他のものよりも1週間ほど早く発芽しました。あくまで筆者の予測ですが、微生物の働きにより地温が高くなったためと思われます。有機質100%の培養土は徐々に微生物の力によって植物が吸収できる形へ変化していくため、植え替えを省きたく、初めから大きいポッドで挿し木をしたい場合におすすめの方法です(ただし、土の菌が有機質を分解するため、穂木が腐る恐れがあります。 2021年12月12日追記、牛ふん、バーク堆肥ともに完熟を使用しています。 2022年2月4日追記)。根拠に乏しいため、削除しました。4月に挿し木をすると発芽するまでの期間は早い傾向がありそうです。
筆者から最後に
いちじくの挿し木の「成功率が9割」というのは言い過ぎかと思いますが(発芽だけなら9割も可能ですが)、十分に根を育てて水の管理さえ気を付ければ元気に育てることが可能です。近年人気のいちじくですが、皆さんもベランダやお庭でいちじくの挿し木に挑戦してみてはいかがでしょうか^^
ここまでご覧いただきありがとうございました♪素敵ないちじくライフをお過ごしください♪
☆追記☆
You tubeを始めました!ブログよりもさらに更新頻度は少なめですが、応援いただけますと嬉しいです♪どうぞよろしくお願いいたします。